僕はどうしようもない奴だ。
嫌われている、そりゃそうだ。
こうして欲に負けて簡単に人を殺してしまうのだから。
化け物、化け物、化け物。

今となってはどうして僕がここに留まっているのか、わからない。
ここは檻なのか、城なのか僕にはわからなかった。
忘れている、考えれば考えるほど胸は痛くなった。

ちらちらと家の中に差し込む光が気になって慌てて閉ざして暗くする。
安心、しかしすぐに意識は別のところに向く。


久々に得た血は僕に力と異常な思考をもたらしていた。

行動も落ち着かない。外に出ればきっと僕は罪を犯すに違いない。

これが本来の僕なら、誰も僕を好きになるはずはないだろう。

でも、シャズィには知られたくない。

本当に身勝手な言い分だ。
僕に笑いかけてくれて、たくさんの時間を過ごしてくれた。
でも、シャズィはどう思っているだろう?

死体を埋めたが友人が消えればおかしいと思うはずだ。

満月までまだ時間はある。
でもシャズィはもしかしたらもっと早くに来るかもしれない。
そんな予感がした。

シャズィに会いたいよ。

シャズィが僕の前からいなくなったら、僕はまた1人なんだ。

1
人にはなりたくなかった。
吸血鬼という呪われた体で生きることに僕は限界だった。

好きだと言う勇気も抱き締めることだって拒んでいた。
気持ちを伝えられなくても一緒にいるだけで十分と、言い聞かせてきたのだ。

触れてしまえば変わってしまう。

何もかも。

しかし触れなくても僕の頭ではゆっくりと疾しい気持ちが支配している。
やっぱり僕はもっと、シャズィに好かれたいし独占したい。
もっと一緒にいたいと僕は思ってしまう。
我慢ができなくなる。

何度も言い聞かせて、一緒にいてくれるだけ幸せだと思っていた。

辺りを見渡せば、寄木細工ばかり目に留まる。
僕はシャズィの作った作品を手に取った。
この綺麗な細工を施した箱をみるたびに僕は一緒にいた時間は嘘ではなかったと安堵する。
増える作品にどれだけの時間を使っていたのだろう。
感覚なんてなくなっていた僕が人間と同じ感覚で時計をみてカレンダーを眺めていた。

今思うと懐かしい。

不意に外におかれた剥製が目に付いた。
記憶が掘り起こされて、作り方がやけに鮮明に思い出される。
あの時も、ずいぶんと寂しい思いでいたんだな…と過去の自分が甦る。


次にシャズィがきたら、僕は何ていえばいいのだろう。
引っ越さないでくれと頼むのか?いいや、できない。
せめて想いを伝えるとか?それも、できないだろう。


僕は最後までシャズィと仲良しでいられるかな?
未来を思ってがこんなにも心が苦しめられるなんて、知らなかった。

早く、楽になりたい。
願いは叶わないだろうと頭の中の誰かが囁いた。

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