名も無き村に一人の女が住んでいた。
女はとても美しかった。
そんな彼女に惚れた男が彼女に恋文を書き連ねてはこっそりと彼女の家に置いていった。
しかし女は文字が読めなかったためにその紙の返事を書くことができなかった。
それでも伝わる文面からの暖かい雰囲気に女も次第に恋文を待つようになった。
一方男はというと、面と向って何かいうこともできず、彼女に恋焦がれるあまりに
不食の病におちいりあっけなく果てた。
それからというもの、彼女は恐れられ、閉じ込められ、
彼女は「鬼女」と呼ばれるようになった。
鬼女と呼ばれた女は、森の中にある小さな箱に入れられた。
鬼女は言われるがままに、そこに座り外を見据えた。
元は村の住人だ、誰もが彼女を見知っていた。
そして誰も近づけなかった絶世の美女だった。
それでもひとたび箱に入れば誰もが彼女を恐れることは無かった。
鬼女はたちまち人気者になった。
昼は子供が訪れて、夜は男共が会いに来る。
たくさんの恋文を渡されて、鬼女は幸せそうに微笑んだ。
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