呪術師は箱に魅入られたかのように鬼女を無理やり箱から出した。
「私は、箱などなくとも先の世がみえる。貴方も次期にそうなるでしょう。」
そういうと、鬼女を自身の姿にかえて、自身を鬼女の姿にかえた。
「私は、この箱にいなければきっと一人です。」
「私も、昔は一人でした。貴方もいずれ、私の行動がわかるときがくるでしょう。」
そういって呪術師が笑うと、自ら箱の中に入った。
「さぁ、お行きなさい。」
その言葉は一種の術のように、鬼女の身体は勝手に丘の上へと走り去った。


入れ替えで鬼女を逃がした後、凶報はすぐに風に伝えられた。
村の女たちは鬼女をみても呪術師だとは思わず、酷い言葉を浴びせた後に火を放った。
鬼はあれよあれよと言う間に燃えていった。
悲鳴ではなく、ただ押し殺したようなうめき声が響いたという。
呪術師の最期はあっけなかった。