また夜になる。
もうすぐ2時になると思うと少しそわそわする自分がいた。


モリアは渡された薬を飲んで、ぼんやりと 天井を眺めていると
時間ピッタリに吸血鬼は現れた。
お馴染みの口調と行動でモリアを困らせた後に吸血鬼は
にこにこと笑顔を作ってこういった。

「モリアさん、キスしていい?」
「順序はどうした?紳士。」
「少しの進展ぐらい許されるはず。」
「んなわけあるか。手返せ。」
相変わらずモリアの手を握る吸血鬼に対して言うとあからさまに嫌そうな顔をした。
「キスさせてくれるならいいですよ。」
「嫌だ。」
「はぁ、モリアさんはわかってないよ。そういえば顔色悪いね、病気かな?」
「なら帰れよ。」
「嫌だよ、看病する。熱は?」
そういって額にモリアの手を掴んでいない方の冷たい手が添えられる。
「っ・・・」
拒否しようと空いた手で払い除けようとしたが射るような目にみいられてモリアの行動は静止した。
「少し、あるね。あっ、顔が少し赤いね。」
吸血鬼は笑みを浮かべた。
「ねぇ、いつから?」
「・・・先週から。」
医者のような台詞にモリアは嫌悪感を覚えながら早く終わって欲しい
という願いから言葉は瞬時に出る。
「熱が・・・あるだけ?」
そういって額から手を放す。
「・・・喉が痛い。食欲がない。お前の顔を見ると具合が悪くなる。」
「最後のは傷つくよ。」
「傷つきたくないなら帰れよ。」
「モリアさんにつけられる傷なら平気。」
「気持ち悪い。」
「だって好きな人だから、許せるよ。」
「相変わらずだな」
「大好きだよ、モリアさん。」
そういって手にキスを落とす。
まるで社交的な挨拶のようなキスにモリアは苦笑した。

「吸血鬼、あんたの名前は?」
モリアがけだるそうにきけばぱぁっと明るくなる。その様子にモリアは顔をひきつらせた。

「名前、聞きたいですか?」
「別に・・・いつまでたっても吸血鬼じゃまるで存在を許しているみたいだろ。」
「ふふっ、俺の名前はサハラです。」
「変な名前。」
「名前、呼んでみてください?」
嬉しそうにサハラと名乗る吸血鬼はぎゅっとモリアの手を握った。
「・・・サハラ。」
「何ですか?」
「呼べって言ったから、呼んだだけだ。」
「あははっ素直。」
そういって嬉しそうに顔を綻ばせた。