連作「箱の中の神」
―こっちにおいで。―
言い伝えは、再び息を吹き返し伝説となった。
神は初めこそ獣のように箱を蹴破ろうとしたが
下界の空気になれてきた頃にはすっかり大人しくなった。
神は何でもしてくれた、村のために。
出られない箱に入れられながらも、常に村人の話を聞き考え道を示した。
好きなとき、好きなだけ、村人は神様のもとに訪れた。


幾年の時が過ぎると、少年も青年となった。
神になった男は村人のいうことをなんだって聞いた。
そうすることでしか、神は存在できなかった。
一人が怖かったのだ。

いつしか神は、、人の心を操ることができるということを知った。

村の偉い人たちは最初の頃は良くしてくれた。
けれども最近じゃ、神が予想以上の力を持つことになり
誰も彼らの話を聞かなくなった。


<続く>