連作「箱の中の神」
―さようなら―
神様が現れて、皆が神様をすきになったころ
村で、疫病が流行った
雨が続いた。
たくさん、たくさん悪いことが起った。
村を守っていた神様はいつしか疫病神と呼ばれ誰も足を運ばなくなった。
神様の箱の外にはいくつもの屍体が置かれていった。
腐るはずのない神様もまた、腐っていった。
悪いことはいつまでも続かない。
再び村に平穏が訪れると村の人々は神のことを思い出した。
行ってみると、箱ごと神は燃えていた。
誰かがこういっていた。
「最後の力を使って村を守ったのだ」と。
親から子へ、それは今でも代々言い伝えられている。
疫病がきて、悪いことが立て続けに起った。
村の偉い人たちが、これ見よがしに屍体を箱の外に並べていった。
そして「やれるものなら生き返らせてみろ」と言ってのけた。
たまに人がきては、神を棒でつつき疫病神と全ての怒りと悲しみをぶつけにくる。
神は、力もわかなかった。
絶望も、怒りも、悲しみも、どうでもよくなった。
再び晴天が訪れ、村に平穏が訪れた。
神は腐敗したそこらの屍体と変わらぬ容貌を向けて座っていた。
一人の少女が、神をみて走って逃げた。
それを知った村人たちは腐敗した神を、箱ごと燃やした。
そして誰かがこうつぶやいた。
「また作れば良い。」
完