連作「箱の中の神様」
―人ノ上ニ人ヲ作ラズ―

村には昔からの言い伝えがあった。
「森の中の箱の中に入った者が神となり村を守る。」
ここ何十年、神様は不在だった。
いつしか言い伝えは風化し、無になろうとしていたときだ。
誰かが箱の中に入った。
村の者ではない、余所者、「神」が中に入ったのだ。



その日、少年は生きるために知らぬ村で盗みを働いた。
すぐに見つかり、追いかけられ、気を失った。
そんなことはいつものことだった。

目が覚めると、小さな箱の中にいた。
それは村に来る途中に通り抜けた森にあったものだった。

床には人の絵が描かれただけの黒い箱。
またいつものように引っ叩かれ罰を受けるんだと思った少年は
この気味の悪い箱から出される日を持った。
しかし今回はそうではなかった。
村の偉い人が少年にこういった。
「お前はこの村の神になった」と。
一生外には出られないことを少年に告げて、村の偉い人たちは村へと帰った。


<続く>