「2人で恋人探しですか。お揃いですね。」
牧師は茶化すわけでもなく、淡々という。
「俺は・・・っ」
「僕がその恋人ですか?」
牧師は教師の言葉を遮って言うと教師は少し驚いたように
目を見開くが黙って頷いた。
「132号室、俺が殺した後、もう一度来たんだ。
その時はもう二度と使うことのない部屋だと言っていた。」
「へぇ。」
「でも、牧師さんはここで死んだことを知っている。」
「何故だと?」
「Kが喋ったんだ。最愛の恋人には、何でも喋る、だろう?」
教師はそういって笑みを浮かべた。
「貴方も、随分お喋りになりましたね。」
牧師はふうとため息をついた後にまた、口を開く。
「先生。何故先生がこの場所を知っているかが逆に聞きたいですね?」
「何の話だ。」
「だって、恋人じゃなくても、知ってるに決まってるじゃないですか。殺した人間が、ね。」
「だから、俺はお前が殺していない・・・と・・・」
「で、恋人ですか。あははっ、まさか殺人罪を取り合いになるなんて思ってませんでした。」
「何故、俺に殺人を喋った?」
教師は神妙な面持ちで牧師に尋ねた。牧師は意外そうな顔をしていたがすぐに笑った。
「雨が嫌いなんです、お喋りになってしまうんですよね。」
「そんな言い訳・・・。」
「ですよね。実は貴方があの町の人間と言ってから甚だ疑問に思うことがあるんです。」
「え・・・。」
「僕は最初、昔に貴方を見掛けたと思いました。
でも不思議なことに貴方はあの町の住人ではないような気がするんです。」
「な、どうして・・・?」
「住人に会えば必ずと言っていいほどの会話を、貴方はしなかった。」
「は・・・?」
「いえね、確かに、会話は正確でしたよ。でも、Kの話。Kはね、皆から好かれていた
ことはそこにいたらわかるはずですよ。有名な方でしたから、Kは。
才能豊かな、誰もが嫉妬と羨望を向ける存在。それが、どうしてあんな言われになったの
かと・・・気になりました。」
「嘘だ、そんなはずは・・・!」
教師の顔は大きく歪んだ。頭を抱えて、話がわからないといった風だった。
「おそろい、じゃなかったんですね。最初から・・・」「違っ・・・」
「閉鎖的な町なんです。貴方は知らないでしょう?どうして町の人間が名を隠し同じ名を共有するか。」
「っ・・・・・・それは・・・。」
言葉に詰まった。教師は困ったように顔を伏せた。
「降参、ですね?最初はすっかり騙されていたんですがね。」
「・・・。」
「聞いてもいいですか?何故、Kのことを知ったんですか?何故、犯人だと?」
優しい口調で牧師は訪ねると教師は観念したのか深くため息をついた。
「俺は恋人を知ってる。Kの恋人を・・・そうか、
俺はあいつに騙されていたってことか・・・。」
1人で納得するように、ゆっくりと悲しそうに教師はつぶやいた。
「たくさん、聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
呆然とする教師に牧師はクスクスと笑いながら聞く。
「貴方は、誰ですか?」と。
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