あー、あー、何だか喋ってもこれはすっきりしないね。
俺は、こうやってはなすけど、モギィーのことはあまり知らない。
ただ、俺はモギィーを処刑しただけのこと。
自分が殺した奴ってさ、一体どうしてこうなっちまったんだろうって
気になるんだよね。
だから、処刑一週間前になると無性に調べたくなる。
そして、死んだ後こうやって誰かに話したくなるんだ。
あぁ、また執行書類が届いた。
また仕事か。
そうそう、1つだけモギィーとのエピソードがあったんだ。
俺が何をするでもなく、モギィーのいる檻の中にいったとき
モギィーは俺の気配を素早く察知してにっこりと笑いかけた。
何をいうでもなく、ただ寝不足の目をうっすらとあけて、俺を見上げているのだ。
「眠れないのか?」というと、モギィーは「眠ったよ。」という。
モギィーは言葉が不自由だから、何も言わない。
流れる沈黙に俺は口を開いた。
ただのかわいそうな奴だという証拠を揃えているから聞いてみたかったのだ。
「人を殺してもいないのに入った監獄はどんな気分だ?」とね。
するとあいつはその言葉をひどくゆっくりと頭をもたげていた。
理解に苦労するといわんばかりに頭を抱えた。
そしてでた答えといえば
「好きだよ、ここ。」
そのとき、少しだけ心が揺れた。
俺もあの貴族の気持ちが、少しだけわかった気がした。
それだけ。