これは昔々のお話です。

大きな大きなお屋敷に、パパとママと娘のメアリー。
娘の誕生日にパパとママは女の子にドールハウスと人形を与えた。

ドールハウスの中のファミリーもまたパパとママと少女。
その人形の少女はメアリーと同じ金色の長い髪をもっていた。
どこか似た雰囲気を感じた少女はその玩具でいつも遊ぶ。

メアリーの小さい手がパパをつかむ。そして人形の少女へと寄り添う。
もう片方の手でママをつかむ。そして人形の少女へと寄り添う。
それは少女が憧れた、幸せな家族。
ドールハウスの中のファミリーは、本当に幸せ。
メアリーは人形たちを動かしながら擬似体験。


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どうして私と遊んでくれないの?

「あなたにはたくさんの玩具があるでしょう?」
ママはそういって忙しそうに外に出る。

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どうして私を抱きしめてはくれないの?

「それに何の意味があるのだい?」
パパは笑いながら、冷たい背を向ける。

あぁ、これが本当の家族。
夢を映すドールハウスと人形も遊びつかれて服はぼろぼろ。
人形の髪は梳かしてもぐちゃぐちゃ。
もう絡まってしまってとれはしない。

こうして、美しき家族の虚像はガタガタと音を立てて崩れ始めた。

美しきドールハウスは幼き少女の手によって壊された。
人形の家族は路頭に迷う。
それから。
メアリーはパパの首をとって捨てた。
メアリーはママの首をとって捨てた。
少女がパパとママだとわからないように。

メアリーは少女の足を捥いだ。
もう二度と、パパとママに近づけないように。

そしてメアリーはよりいっそうその人形が好きになった。
首の無いパパとママ。
足の無い少女。

そしてメアリーは優越感にも似た気分に酔いしれる。
でも別に心の無い人形は何も思わない。

だから人形は捨てられても幸せな表情を浮かべる。

ここでいったんお話はおわり。


それから、メアリーの心に平安が訪れた。
一度得た快楽。
愛されない孤独が生んだゆがんだ愛。

愛されないのならば愛せばいい。

真夜中、階段をゆっくりと上がる少女。
その手には大きな斧が鈍く光る。

翌日から愛されない少女は愛することを知った。
首の無い人間たちを抱きしめながら、こう囁く。

「二人とも大好き」

金色の髪が風に揺れた。

Fin...

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