*風船宿、風船宿。ここは天下の風船宿。
七色の風船を見掛けたら是非ともお泊まりあれ。
そんな歌が森から聞こえたら要注意。ピエロに遭えばジ・エンド。
昔々のお話はここから始まる。
少年は道に迷っていた。いや、親に捨てられたのだ。
あわれな少年はそれに気付かず家を探す。暗い暗い森の中で。
そんな不安を抱えながら森に進む。
そして少年はみつける、少女の首を。
それから、赤い靴を履いた片足。
片足はまだ動いている。熱を帯びている。生きている。
少年は悲鳴を上げそうになった。
――――なんと恐ろしいのだろう。
それにたいして、少女の首は少年に不思議な気持ちを抱かせた。
少女の首は腐敗せずにそのまんま。
金色の髪も風に揺れる。
それはまるで人形の首。
少年はごくりと息をのむ。
―――――なんと美しいんだろう。
少年はその首を抱きしめた。
金色の髪を優しくなでる。
少年は家に帰ることを忘れた。
森の中に家を立てた。
少女と住む、可愛い可愛いウッドハウス。
少年は幸せ。
少女もきっと幸せ。
片足は、暗い森の中にいる。
傍らに黒ずんだ風船を置いて。
少年は少女に夢中。いつまでもいつまでも。
少女は目を閉じすまし顔。
少年の愛にこたえることは一度も無かった。
それでも二人は幸せ。きっと幸せ。
これでお話はおしまい。
その後の話。
少年は、七色の風船に気づかなかった。
すでに黒ずんだ、あわれな風船には目も留めていなかったのだ。
やさしいピエロは新しい七色の風船をもってウッドハウスに遊びに来た。
「さぁさぁ、このふぅせんをだいじにしておくれ。」
少年は見たことのない七色の風船に目を輝かせた。
数日後、七色の風船は萎んで暗い暗い森の中。
赤い靴を履いた片足と少女、そして少年の首。
けれども、少年の首は片足が踏み潰した。
かわいそうに、顔がズタズタ、もう誰かもわからない。
それは復讐?それとも嫉妬?
片足は何かを探している。
さて何を?
Fin…?
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