第一章―迷子
昔々のお話です。
1人の少女は今日という日が待ち遠しかった。
なぜならママに買ってもらった新しい靴を買ってもらったから。
どこかにいきたくてずっとうずうずしていたのだ。
やっと家族の予定がたって、靴を許されたのがサーカスだった。
楽しい楽しいサーカスを、家族でみた少女は幸せだった。
しかしサーカスが終わり、夕方になると、少女の視界から家族が消えた。
きっと少女は家族とはぐれてしまったのだ。
たくさんの人がいるというのに、自分の親だけがわからない不安。
少女がおどおどと探していると一人のピエロが少女の前に…。
ピエロは笑う。たくさんの風船を持って。
少女はそのピエロに親とはぐれて困っていると話す。
ピエロは笑う。別に、何をいうわけでもなく。
少女は困ったような表情を浮かべた。
ピエロはそんな少女に風船をあげた。
七色の綺麗な風船だった。
少女は少しだけ勇気が湧いた。
ピエロは笑ってばかりだったが最後にポツリと少女に忠告した。
「ぜったい、そのふうせんをはなしちゃだめだよ」
少女は黙って頷いた。ピエロは笑いながら手を振っている。
だから少女も手を振り替えした。
風船を持って、家族を探していると突風が絡めた風船の紐を
いとも簡単にほどいてしまった。
少女の風船はみるみるうちに、空たかく登った。
少女は追いかける。
でも間に合わない。
とうとう、風船は消えてしまった。
そして少女は森の中に迷い込んだ。
途方にくれ、泣きじゃくる少女。
帰路を知らぬ足はついには少女を立ちどまらせる。
泣きつかれた少女は、森の中で眠った。
夢の中で、音を聞いた。
ポタリ、ポタリと滴る血の音を…。
その跡を追いかける少女。
見つけたのは赤い靴を履いた片足。
まだかすかに動いてる。
夢から覚めた少女の手には、赤い靴を履いた片足が眠る。
それは見覚えのある足だが少女は思い出せない。
少女は、足に導かれ、なんとか森を抜けて家に帰ることができた。
少女は、その生をおびる片足に不思議な愛情を感じていた。
そして、誰の目にも届かぬ屋根裏に置いた。
その片足は彼女の気まぐれで、幾度と無く愛された。
足はまだ微かに動く。熱を帯びている。
何年、何十年、時が過ぎようとも足はまだ微かに生を感じる。
時が経てば経つほど少女は愛しかったその片足を気持ち悪く感じた。
そして、もとあった場所へと捨てた。
これでこのお話はおしまい。
しかし、捨てられたその片足からは血が滴る。
血で跡をつける。
その隣には可愛い可愛い少女の首。
そして萎んでしまった黒ずんだ風船。
片足は探している。
さて何を?
Fin...?
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